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Web magazine“Present” 広報誌「Present」Web版

2021年3月号掲載

「日本酒」を知って、もっと楽しもう!

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8・9・11・12・2月号と「ニッポンの伝統文化」についてご紹介してきました。
最終回は日本だけではなく、いまや世界中の人々に「SAKE」として愛飲されている日本酒。
和食ブームを背景に、世界的な人気で評価の高まる日本酒について、その歴史や日本酒の種類、飲み方や健康効果をご紹介します。

日本酒の起源は?

日本酒の始まりについては諸説ありますが、およそ2千年前の弥生時代、稲作が伝わった頃と推測されています。中国の文献『魏志倭人伝』にも、酒に関する記述があります。同書によると、倭人が「人性酒をたしなむ」と評し、喪の際には弔問客が「歌舞飲酒」をする風習があると記述され、古くから酒を飲む習慣があったことが伺えます。

奈良時代の書物『古事記』には、須佐之男命が、八岐大蛇を退治するために「八塩折之酒」を造ったという記述が残っています。
また、古事記と前後して書かれたと言われる『大隅国風土記』に登場するのが、「口噛みの酒」です。これは、巫女が米を口で噛んで糖化させ、ツボに吐き出し発酵させて作った酒で、米を原料とした最古の酒ではないかと考えられています。
その後、酒造りの中心は神社となり、さらに神社をとりまとめる宮中へと変遷していきます。その時の酒は、「宮中酒」と呼ばれていたそうです。

僧侶が造る「僧坊酒」

平安時代になると、酒造り専門の「造酒司」が宮中に設置されます。宮中での作法が記された『延喜式』には、米・麹・水で仕込む酒造りの詳細が記述されています。

宮中の高度な技術で作られた酒は、貴族などごく一部の人のための飲み物でしたが、やがて市井にも酒が広まっていきます。それが、寺院で作られる「僧坊酒」の始まりです。その中でも、高野山の「天野酒(あまのさけ)」はよく知られています。

こうして祭りなどのときに庶民が酒を飲むようになると、商家も酒造りを始めました。日本最古の酒蔵は、茨城県笠間市にある「須藤本家」で、創業は平安時代末期の1141年頃と言われています。

日本酒にもさまざまな種類が

日本酒の原料は、「米・米麹・水」の3つが基本です。原料となる米の種類や削り方(精米歩合)、醸造方法の違いや添加物の有無によって種類があり、味わいも変わります。
日本酒は大きく、「吟醸酒」「純米酒」「本醸造酒」に分かれます。これらは「特定名称の清酒」と呼ばれ、国税庁の『清酒の製法品質表示基準』では、使用する原料や製法(精米歩合など)によって、下表のように8種類に分類されています。

吟醸酒

吟醸酒は、米・米麹・水とともに、醸造用アルコールを原料に使用します。さらに、「精米歩合60%以下」「吟醸造りの製法であること」などが、吟醸酒の要件です。吟醸造りとは、よく磨かれた米を、通常よりも低温で長時間発酵させる製法で、これにより華やかでフルーティな香りが特徴の日本酒ができあがります。

純米酒

米・米麹・水、3つの原料だけで作られるのが純米酒です。醸造用アルコールが含まれていないため、コクや旨味、ふくよかさが前面に出てくる、濃醇な味わいが特徴です。米が持つ本来の旨味が感じられるのも、純米酒ならではでしょう。

本醸造酒

吟醸酒と同様に、米・米麹・水に加えて、醸造用アルコールを原料に使用します。吟醸酒との違いは、「精米歩合は70%以下」「醸造アルコールの添加量は、原料の米の総重量の10%未満」といった点です。味わいはスッキリとした辛口で、甘くなりすぎず、後味の爽快感の良さも特徴です。辛口の日本酒が好きな人に合います。

特定名称の清酒の種類

特定名称使用原料精米歩合こうじ米使用割合(新設)香味等の要件
吟醸酒使用原料米、米こうじ、
醸造アルコール
精米歩合60%以下こうじ米使用割合(新設)15%以上香味等の要件吟醸造り、固有の香味、色沢が良好
大吟醸酒使用原料米、米こうじ、
醸造アルコール
精米歩合50%以下こうじ米使用割合(新設)15%以上香味等の要件吟醸造り、固有の香味、色沢が特に良好
純米酒使用原料米、米こうじ精米歩合こうじ米使用割合(新設)15%以上香味等の要件香味、色沢が良好
純米吟醸酒使用原料米、米こうじ精米歩合60%以下こうじ米使用割合(新設)15%以上香味等の要件吟醸造り、固有の香味、色沢が良好
純米大吟醸酒使用原料米、米こうじ精米歩合50%以下こうじ米使用割合(新設)15%以上香味等の要件吟醸造り、固有の香味、色沢が特に良好
特別純米酒使用原料米、米こうじ精米歩合60%以下又は特別な製造方法(要説明表示)こうじ米使用割合(新設)15%以上香味等の要件香味、色沢が特に良好
純米大吟醸酒使用原料米、米こうじ、
醸造アルコール
精米歩合70%以下こうじ米使用割合(新設)15%以上香味等の要件香味、色沢が良好
純米大吟醸酒使用原料米、米こうじ、
醸造アルコール
精米歩合60%以下又は特別な製造方法(要説明表示)こうじ米使用割合(新設)15%以上香味等の要件香味、色沢が特に良好

出典:国税庁「『清酒の製法品質表示基準』の概要」より

日本酒の楽しみ方、冷それとも燗?

日本酒は種類も多いですが、飲み方も多彩です。冷やして飲む、温めて飲むなど、いろいろな温度で飲み方が楽しめることも魅力の一つ。家で過ごす時間が多いいま、いろいろと試してみてはいかがでしょうか。

冷酒

冷蔵庫などで冷やした酒で、温度は5〜15度程度の範囲です。冷やせば冷やすほど、香りや味が落ち着き、飲みやすくなります、すっきりとした飲み心地になるため、吟醸酒や生酒など、香りを楽しむ日本酒に向いています。

常温(冷や)

冷やすことも燗もせず、そのままの温度で酒を飲む飲み方で、概ね15〜20度程度の温度です。季節によっては、軽く温めたり、冷やすと飲み頃になります。口当たりが良く、日本酒の本来の香りや味が楽しめます。純米酒や吟醸酒がおすすめです。

燗酒

温めて飲む飲み方で、「お燗」とも呼ばれます。温度は30〜55度程度で、電子レンジや湯煎で温めます。酒の旨味や甘みが増すことで、酒が持つ味の幅が広がりますので、好みに合わせて温度を調節します。燗酒には、純米酒や本醸造酒が向いています。

日本酒の健康効果は?

「酒は百薬の長」といわれれば、酒好きの人にとっては心強い限りです。日本酒は、米と米麹を発酵させる過程で、さまざまな栄養成分が生まれます。栄養成分が多く含まれることで、健康づくりに役立つと考えられているのです。

身体に大切なアミノ酸が豊富

日本酒には、ビタミンやミネラルなど、いろいろな栄養素が含まれていますが、中でも注目されるのが「アミノ酸」。
アミノ酸は、たんぱく質の元となるため、身体には大切な栄養素のひとつですが、そのアミノ酸は、アルコール類の中では日本酒が最も豊富に含まれています。また、アミノ酸は肌の天然保湿因子の主成分でもあり、美肌効果も期待できそうです。

新陳代謝が良くなる

血管の働きを助け、体温を上げるのに役立つ「アデノシン」という成分が、日本酒に含まれています。体温が上がることで新陳代謝が促進され、身体の古い細胞が新しい細胞に入れ替わり、皮膚や髪を若々しく保つ効果が期待できます。
また、血行が良くなれば、内臓機能が活発になりエネルギーの消費もアップ。さらに、体の凝りがほぐされる、冷え性を改善するなどのメリットも考えられています。

肌への美容効果も

栄養成分豊富な日本酒は、美容効果も期待できます。例えば、日本酒に多く含まれる「コウジ酸」は、肌のシミの元になる、メラニン生成を抑える効果が期待できます。
また、ポリフェノールの仲間である「フェルラ酸」は、肌の老化に関連する活性酸素を減らしてくれる働きがあり、シミやたるみの解消など、美肌効果が期待できる成分です。

日本各地で作られる日本酒は、それぞれに個性的な味わいを楽しむことができ、栄養も豊富で健康効果も期待できる飲み物です。

適量を守りながら楽しめば、自宅飲み時間が充実したものになるでしょう。

column 杜氏とは

きめ細やかな味わいが魅力の日本酒だけに、造り手にも繊細で高度な技能が求められます。蔵元から酒造りを請け負う職人集団である“蔵人”のリーダーで、最高責任者が「杜氏(とうじ)」です。
かつて、酒造りは神に仕える女性たちの仕事でしたが、その中で年かさの女性を「刀自」と呼んでいたことから発音が受け継がれ、今の字が当てられたといわれています。

そもそも杜氏は、地元で農業を営み、冬場に酒造りをする、いわば“季節労働者”でした。杜氏が中心となり、農閑期で手の空いた農村の人たちを率いて、日本酒づくりを請け負う杜氏集団ができたのです。
いまでは、地方によって酒造りの技が受け継がれ、日本各地にさまざまな杜氏集団が生まれました。
中でも、岩手県の「南部杜氏」、新潟県の「越後杜氏」、兵庫県の「丹波杜氏」は、日本の3大杜氏といわれ、高度な技術を持った杜氏として知られています。

酒造りのリーダーである杜氏は、蔵元が求める酒を作るために、酒蔵内の管理全般に目を光らせ、原料の扱い、圧搾、貯蔵、熟成など、製造工程全般に関わっていきます。
杜氏を中心とした、伝統的な製造法で作られる日本酒ですが、海外でも高い評価を受け、「獺祭」で知られる山口県の旭酒造に杜氏はいません。徹底したデータ取得・管理の手法を用い、近代的な工場で生産されているのです。

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