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Web magazine“Present” 広報誌「Present」Web版

2021年5月号掲載

「キャッシュレス決済」、メリットや上手な利用法は?

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スマホの普及とともに、「キャッシュレス決済」は
生活の中にじわりと浸透しているようです。今月は、コロナ禍による、
非接触の潮流が続く中で注目されるキャッシュレス決済について、
あらためてその手段を知っておきましょう。

日本のキャッシュレス決済はどこまで進んだ?

キャッシュレスを語るときに、しばしば耳にするのが「キャッシュレス決済比率」です。

キャッシュレス決済比率とは、「キャッシュレス支払手段による年間支払金額÷国の家計最終消費支出」で算出したもの。2017年に、経済産業省が公表した「FinTechビジョン」に基づき、この計算式が使われることになりました。

日本の2019年時点のキャッシュレス決済比率は26.8%で、2010年の13.2%からおよそ2倍に伸びています(※1)。後述するキャッシュレス決済の種類ごとに内訳を見てみると、クレジットカードが最も多く、ついで電子マネー、デビットカード、QRコード決済と続きます。

中でも注目は、QRコード決済が前年2018年より約6倍に伸びている点です。LINE PayやPay Payなど、スマートフォンから手軽に決済できる仕組みが浸透してきたこととは無縁ではないでしょう。

日本人はこれまで、現金払いを好む国民性と語られることが多かったのですが、国はキャッシュレス決済比率を、2025年までに40%程度、将来的には世界最高水準の80%を目指す目標を掲げています。

キャッシュレス決済を推進する背景としては、現金の取扱コストの問題も挙げられます。

現金の製造コストについては、日本銀行の令和元年度の決算資料によると、銀行券の製造費は524億円(※2)。さらに、現金を流通させるためのATMの設置費用や維持・管理費用も含めれば、多額のコストが必要なことは容易に想像できます。

※1:経済産業省「第2回 キャッシュレス決済の中小店舗への更なる普及促進に向けた環境整備検討会」資料
※2:日本銀行「第135回 事業年度(令和元年度)決算等について」

キャッシュレス決済を分類すると

ここで、あらためてキャッシュレス決済の種類を整理しておきましょう。決済の種類は、「支払いのタイミング」によって大きく3つに分けられます(図表参照)。

キャッシュレス決済の種類

種類 利用方法
前払方式
・電子マネー
事前にカードやスマートフォンにチャージ(入金)し、店舗の
端末で読み取って支払う
即時払い方式
・デビットカード
店舗の端末で読み取って支払うと、紐付けた銀行口座から
即時に代金が引き落とされる
後払い方式
・クレジットカード
クレジットカード会社が立て替えた買い物代金を、消費者が
後日カード会社に支払う

どの種類の決済も、磁気やICチップの組み込まれた、プラスチックカードを提示して支払うことが一般的でしたが、いまではスマートフォンにクレジットカードや電子マネーなどを登録し、QRコードやバーコードを利用した決済も増えてきました。

それぞれに特徴がありますが、家計管理にも関わってくるものですので、利用の際は、買い物のシーンや金額などによって使い分けると、便利でかつ使いすぎの防止にもなるでしょう。

キャッシュレス決済で何が便利に?

では、キャッシュレス決済のメリットはどのようなものがあるのでしょうか。

● 現金が必要なく会計がスピーディ

会計時に札や小銭の出し入れから開放されますから、レジでの支払いも素早く済ませることができます。高額紙幣を出したときの店員と客、双方のお釣りの確認なども急いでいるときには煩わしく感じることもあるでしょう。また、店側から見てもレジを閉める時の現金管理なども手間がかかる作業といえます。キャッシュレスが進めば、業務効率の面からも利点がありそうです。

● ATMに並ぶ必要がない

月末近くになると、多くの人が銀行のATMに並ぶ光景が見られます。手間や時間がかかりますから効率的とはいえません。キャッシュレス決済の種類によっては、チャージが必要な場合もありますが、クレジットカードやデビットカードからのチャージであれば、いったん現金を引き出す手間も不要です。銀行もATMの削減に動いていますので、キャッシュレスの利便性をより感じるときが来るかもしれません。

● お金の管理がしやすい

スマートフォンの家計簿アプリなどに、カードや電子マネー、QR決済、銀行口座などを連携させておけば記録が残るため、自動で支出管理ができ、家計管理が一段と楽になります。買い物の都度、手動で記録をつける手間がないので、家計簿の習慣がなかった人でも長続きするでしょう。

● コロナ禍での非接触にも対応する

衛生面からもメリットがあります。新型コロナウイルス感染症が世界中に広がるなか、カードやスマートフォンなどを使い、紙幣や硬貨を利用せずに決済ができる点は、現金を介した店員と客の接触機会を減らすことにも寄与します。衛生上の観点からも、非接触時代にもマッチする決済方法といえます。

キャッシュレスは使いすぎる?

便利なキャッシュレス決済ですが、一方で、現金でないと使いすぎるのではないかという声も耳にします。これに関しては、日本クレジットカード協会の調査があります(表参照)。

現金とクレジットカード間の
購入単価格差

単価比率=クレジットカード決済単価/現金決済単価

業種名 単価比率
全体(@1,000円以上)※ 1.71
小売店 スーパーマーケット 1.58
コンビニ 1.55
ドラッグストア 1.85
衣料品専門店 2.3
雑貨・文具 2.54
交通関連 新幹線・特急列車 1.71
高速バス 1.22
タクシー 2.06
飲食店 @3,000円以上 1.39
@1,000〜3,000円未満 1.11
@1,000円未満 1.14
ホテル・旅館・宿泊施設 1.28

※日本クレジットカード協会「現金とクレジットカード間の購入単価格差に関する調査」

調査では、業種別に、購入者のクレジットカードと現金の利用額の差が発表されています。それによると、スーパーマーケットでは1.58倍、コンビニで1.55倍、雑貨・文具で2.54倍、業種全体平均では、1.71倍、クレジットカードの方が現金よりもお金を使っているという結果でした。

明確にはわかりませんが、クレジットカードの方が使い過ぎてしまう要因として、財布の中にお金がなくても、購入できることが挙げられるでしょう。後払いという特徴から、購入への心理的なハードルが下がり、持っているお金以上に買い物をしてしまうのかもしれません。

使い方を工夫すれば便利でお得に

とはいえ、キャッシュレスは先述のようなメリットはもちろんのこと、カード会社や決済事業者によるポイントの付与という特典もあります。使い方を工夫すれば、現金よりもお得に利用できるでしょう。

● 使いすぎ防止にデビットカード

購入代金が、支払いと同時に銀行口座から即座に引き落とされるデビットカードの特徴から、使いすぎの管理にはもってこいです。口座残高の範囲内での利用になるため、用途を決めて利用すれば、支出管理も楽になります。

● クレジットカードは1回払で

クレジットカードは、カード会社などによって2回から24回などの分割払いもできます。ただ、分割払いの途中に家計に変化が起きて予想外の支出があると、返済負担が増えてしまいます。クレジットカードでの買い物は、確実に返済できる額の利用にとどめ、1回払にしておくのが安心です。

● チャージ方法をひと工夫

電子マネーやQR決済などでは、残額が一定の額を下回ると、紐付けた銀行口座やクレジットカードなどから、オートチャージできる機能を持つものもあります。便利ではあるのですが、無意識に使ってしまうと常に残高のある状態になりますから、使いすぎに繋がる恐れもあります。

そのためには、なるべくオートチャージの設定はせず、予算の上限を決めてチャージするようにします。どうしてもオートチャージを利用したいという人は、チャージ元を銀行口座にしておけば、デビットカードと同様に、口座残高内の利用にとどめることができます。クレジットカードからのチャージだと、後から支払いがやってきますので、管理が難しくなることも考えられます。

現金を持たずに買い物ができるメリットや、ポイント還元の特典もあるキャッシュレス決済。自分なりのルールを決めて生活に取り入れ、便利でお得な生活を実現しましょう。

column 給与もキャッシュレスの時代に?

会社員の給与を、キャッシュレス決済サービスで受け取る、いわゆる「給与のデジタル払い」が実現するかもしれません。
労働基準法では、給与の支払いは全額を通貨で支払うことになっていますが、労働者の同意があれば、銀行などへの振り込みも例外として認められています。この例外に、スマホ決済などのキャッシュレス決済も加えようと検討が進んでいます。
実現すれば、都度ATMから現金を引き出すことなく買い物ができたり、同じスマホ決済サービスを使う子どもに小遣いを送金するなどの使い方が想定されます。
給与のデジタル払いの対象になるキャッシュレス決済は、PayPayなどの資金移動業の登録事業者で、今後定められる基準を満たした事業者になる予定です。

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