高知県 高知中学校
一学年 本田 哲平(ほんだ てっぺい)
僕が小学二年生のとき、母が病気になった。病名はガン。テレビのCMやドラマの中だけの世界にあるものだと思っていたのが、急に現実の世界で、しかも自分にとって一番大事な母がその病気になるとは思っていなかった。当時小学生の僕は、とてもショックだった。
母の病気を知ったのは秋の夜中。なんとなく胸騒ぎがして目が覚め、下に降りていくとリビングに灯りがついていた。そこでは母と兄が話しているようだった。ドアを開けようとしたとき、兄が、
「お母さん、死んじゃうの?」
と言った。僕は心臓が飛び出しそうになった。僕のお母さんが死ぬなんて、どういうことなんだと頭が真っ白になった。廊下で立っていると、足がガクガク震えたが、耳をそばだてて必死に話を聞いた。母は手術が必要であり、治療していかなければいけないということだった。
そこまで話を聞くと怖くなり、部屋にもどったが、涙が止まらなくなった。どうしたらいいのだろうかと。
兄がとなりの布団に入ってきたとき、思い切って聞いてみた。
「お兄ちゃん、お母さんが死ぬってどういうこと?僕たちどうなるの?」
兄は母が病気であることを僕が知っていて驚いていたが、横で寝ている幼稚園児の妹に聞こえないように小さな声で教えてくれた。
「お母さんはガンで、手術が必要みたい。でも治療していけば治るって言っていたよ。お母さんがガンだと知って僕もショックだったし、これからどうなるか心配だよ。うちは母子家庭だから、治療費のこともある。だから長男の僕が早く働いて、お母さんを助けようと思っている。哲平は心配しなくていいよ。きっと医療技術も進歩しているから大丈夫だよ。また明日二人で詳しく聞いてみよう。」
兄のその言葉を聞くと少しは気持ちが楽になった。
翌日、兄と二人で、母に病気のことやこれからのことを聞いてみた。
「心配かけてごめんね。驚かせてしまったみたいね。お母さんがガンで手術しないといけないというのは本当。でも大丈夫よ。しっかり治療していくから。お兄ちゃんは金銭面のことで心配をしているみたいだけど、若いときから、いざというときのために生命保険に入っているの。それにしても生命保険って仕組みがすごいのよ。若いときはリスクが少ないから掛金も安かったし、それなのに保障はしっかりしてる。今回だって、手術するときはもちろん、仕事ができなくなってもその期間の生活費も保障してくれるのもあるからすごいよね。ただその期間、家のこととかお手伝いをお願いするかもしれないけどいい?」
と、優しい声で僕たちにわかりやすく言葉を選びながら、静かに話してくれた。僕たちはそのとき、心のどこかで不安であるが、母と一緒に暮らせるということをありがたいと思った。
僕はこれまで生命保険が一体どういったもので、どんなときに役に立つのか全く知らなかった。今回母が病気になったことで、兄と二人で生命保険とはどんなものなのかを、勉強することができた。
生命保険にはいろいろな種類がある。僕の母が入っている生命保険は、病気で入院や手術が必要になったとき、保障してくれるものだった。その他にも、通院にかかる費用も保障してくれるものや働けなくなったときに生活費を保障してくれるものなどもある。
病気になると、まず「身体が治るのか。」と一番不安に感じるが、その次には手術代や治療費のことが頭に浮かぶ。僕の家は母子家庭であり、母は自分のことより僕たちのことを優先してくれる。一人で家計をやりくりしながら、僕たち三人の子どもを育ててくれている。そんな母は、もし生命保険に入っていなかったら自分のことは後回しにして、手術を受けなかったかもしれない。そう思うと、とても怖い。しかし手術を受けようか悩んでいる母の背中を押してくれたのは、生命保険である。
その後、母は手術を受け、治療に専念することができた。元気になるまで時間はかかったが、今でも以前と変わりなく、僕たち三人のために朝から晩まで働いてくれている。母と一緒に過ごせる何気ない毎日の幸せが、これから先も続いて欲しい。
病気にかからないのが一番であるが、人生何がおこるかわからない。万が一のためにやはり備えが必要である。
生命保険とは、なくてはならないものであり、僕の家族の幸せの絆を繋いでくれた大切なものである。